ITmediaの「IT製品/サービス選び総合版 メールマガジン」は優良誤認の広告メール
広告と記事をどうやって見分けるか。
実は表示要素に頼っているのが現状だ。一番分かりやすい画像広告の場合は、マウスオーバーすると、「Yahoo!広告」、「Ads by Google」とポップアップするし、画像が連続で縦に貼られているコーナー付近にはPRという文字列があり、ここから先(下)は広告だと示唆している。頻繁に訪れるサイトのこの位置には広告しか表示されない、とかもあるだろう。
そして、記事体広告、いわゆるタイアップ広告は、「広告」「企画広告」「AD」「PR」などの文字列やグラフィックが、ページの一番目に入りやすい所にある。
逆に、そういった文言が入っていないものが記事だと言える。
だからメディアには広告と記事しかない。今は、いち読者の立場に戻っているので言い直そう。
メディアには記事と広告しかない
記事でないものは広告だ
言うまでもなく、メディアは、記事のほうが広告よりも優良である、という前提で成立している。これは自明のことだ。そして読者が迷わないように、広告には「広告」「AD」「PR」を明記することになっている。これは基本中の基本だ。
「IT製品/サービス選び総合版 メールマガジン」に戻ろう。そのメールマガジンの本文にあるURLにアクセスすると、どんな記事があるのか?
記事は皆無である。すべて広告だ。ホワイトペーパーやタイアップ広告ページへの誘導リンクなのだ。
一例を出そう。
■社用スマホで公衆無線LANをセキュアに活用する秘策とは
https://re.itmedia.jp/4t7VuabUe公衆無線LANは危険だから社用スマホでは使えない――この常識を破り、世界中の公衆無線LANを安全なものに変える方法がある。「ワンタッチ」で実現するその方法とは。
短縮URLをクリックしないと、「アルプス システム インテグレーション」のタイアップ広告であることが分からない。不親切な広告リンクだ。「広告の主体者が誰であるのかを明確にすることが望ましい」とJIAAのガイドラインにある。
「IT製品/サービス選び総合版 メールマガジン」は完全な広告メールであるにもかかわらず、どこにも「広告」「AD」「PR」の表示がない。景表法「優良誤認(5条1項1号)」を遵守していない体裁である。
受信箱に入っていた9月分19通のメールマガジンをチェックしてみたら、本文は、95の広告リンクで構成されていた。前述したように、リンク先にどんな企業の広告があるのかは記載されていない。すべてクリックして飛び先を書き出してみたら、ITmediaの自社広告(プロファイルの追加入力を促すもの)が25本、残り70本が広告主のリンクだった。
実は、AD/PR表示をしていないのがメールマガジン側(ITmedia社)であっても、景表法違反を問われるのは、その媒体社ではなく、広告主だ。
「IT製品/サービス選び総合版 メールマガジン」はいくつかの点であぶない広告メールであると言わざるを得ない。
ひとつめは、「AD」「PR」表記をしないという方法で、掲載テキストが記事であると読者に誤認させ、広告に誘導している点。
ふたつめは、広告主を景表法違反の危険にさらしている点。
さらに、これはないと願いたいが、広告主が誘導力増を目的に、PR表記なしの「メールマガジン」への掲載を申し合わせている可能性が否定できない点。
媒体資料を見ると、「@IT」「TechTargetジャパン」「キーマンズネット」「ITmedia エンタープライズ」「ITmedia マーケティング」の広告メール配信数は合計で優に50万通は超える。重複アドレスの数は不明だが、30万以上のユニークアドレスに対してone to oneのURL構成の異なる広告メールを配信していることは想像できる。配信停止に戸惑った人はかなりの数存在すると推測される。
ちなみに70本が広告主のあるリンクと前述したが、社数では以下の44社だった。
- arcserve Japan
- BOARD Japan
- Dell Boomi
- EMCジャパン
- JSOL
- SB C&S
- ServiceNow Japan
- Slack Japan
- Splunk Services Japan
- Tableau Japan
- Talend
- TIS
- アシスト
- アセンテック
- インフォマティカ・ジャパン
- ヴイエムウェア、ネットワールド、日立システムズ(共同広告)
- ヴイエムウェア、富士通(共同広告)
- ヴイエムウェア、伊藤忠テクノソリューションズ(共同広告)
- ウイングアーク1st
- サイバーリーズン・ジャパン
- ジール
- シスコシステムズ
- ソリトンシステムズ
- ダークトレース・ジャパン
- デル
- トレンドマイクロ
- 日本アイ・ビー・エム
- ネットアップ
- ネットワールド
- パロアルトネットワークス
- フォーティネットジャパン
- 富士通マーケティング
- ベリタステクノロジーズ
- ミロク情報サービス
- ラクス
- リスモン・ビジネス・ポータル
- レッドハット
- レノボ・ジャパン
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- 日本ヒューレット・パッカード
- 日本ヒューレット・パッカード、ライトウェル(共同広告)
- 日立システムズ
- 日立ソリューションズ
- 理想科学工業